目覚める度に、傷ついて
「奏から手を引いてやってくれないか」


そう言うと、明さんは苦々しい表情を俺へ向けた。


「何を言ってるんだ? 俺は別に何もしてない。もしこの女から何か話を聞いていたとすれば、それはこの女の勘違いだ」


スラスラと嘘を言う明さん。


御曹司という立場を捨てた癖に、そのプライドだけは捨てきれていない様子だ。


「家に戻ったらどうだ?」


あたしがそう言うと、明さんはギターに視線を落とした。


「俺は音楽がやりたいんだ」


「人から、しかも中学生から無理やり金を搾り上げてまでやりたいのか?」


そう質問すると、明さんは言葉を失ってしまった。


代わりに鋭い視線を向けて来る。


あたしはその視線を真っ向から受け止めた。


逃げる気なんてない。


「親に音楽を反対されてるんだ。仕方ないだろ?」


「仕方ない? 仕方ないで通ると思ってるのか?」


その程度の事であたしは親の財布からお金を盗んでいたのか。


そう怒鳴りつけてやりたい気分だった。


「もとはと言えばこの女が万引きしたのが悪いんだ」


そう言われて、奏がビクリと体を震わせた。


その顔はひどく青ざめている。


まるでイジメられているあたしを見ているようで、胸が苦しくなった。
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