キミの笑顔が見たいだけ。
冬休み初日。
「はぁ、寒い」
朝だというのに吐く息が白い。
家の中なのに、凍えるほど寒かった。
「海生、暖房つけて」
「うぃーっす。ってか、出かけんの?」
テレビゲームをしていた海生は、手を止めてこっちを振り返った。
「うん、花純とね」
「ふーん、矢沢君じゃないんだ」
「な、なんで矢沢君が出て来るの?」
「なんでって、好きなんだろ?」
「な、なわけないじゃん……!」
「菜都って、ウソつくのヘタだよな」
「…………」
クスクス笑われて、何も言い返せなかった。
年下の海生にまでからかわれるなんて、姉としての威厳がない上にしかも全部見透かされてる。
誰が見てもあたしの気持ちはバレバレなのかなぁ。
だとしたら、矢沢君も気付いてる?
って、そんなわけないか。
「わ、もうこんな時間」
コートを着てマフラーを巻くと、すぐさま家を出た。
花純との待ち合わせは駅の上の広場。
ものの5分で到着したけど、花純はどうやらまだみたい。
かじかむ手を手袋の上から擦り合わせ、マフラーをしっかり巻き直した。
「菜都ー、お待たせ!」
「おはよう。わ、花純のコート可愛い」
「えへへ、でしょ?親からのクリスマスプレゼントだよ」
淡いピンク色の後ろに大きなリボンがあしらわれた細身のコート。
清楚な花純によく似合ってる。
「クリスマスプレゼントか」
「そうそう!菜都は親からもらった?」
「うちはまだ。っていうか、現金だと思う」
「あ、いいじゃん!そっちの方が嬉しいかも」
なんて他愛ない話をしながら、歩いてショッピングモールへ向かった。