キミの笑顔が見たいだけ。


「大丈夫……?色々聞いちゃったもんね。今日はもう帰ろっか。菜都の家って、ここから歩いてすぐだよね?」


花純は心配そうな顔であたしの顔を覗き込んだ。


「うん、すぐだよ」


「なら、送ってくから。歩くのがツラいなら、うちの親に車出してもらうけど」


「ごめんね……助かる。でも、歩いて帰れるよ」


「そう?じゃあ、ゆっくり歩いて帰ろ」


「うん」


申し訳なさを感じつつも、花純の言葉に甘えることにした。


今は誰かの優しさに頼っていたい。


そう思うほど、あたしの心は弱っていた。


「菜都、最後にこれだけは言わせて」


「うん、なに?」


「気持ちを押し殺したままだと、いつまでも諦めがつかないと思う」


矢沢君のことだと、聞かずともわかった。


「あたしは、やっぱりちゃんと話した方がいいと思うよ。そしたら、気持ちにケリがつくかもしれないじゃん!」


「…………」


花純の言う通り過ぎて、返す言葉が見つからない。


ホントはあたしだってわかってるんだ。


このまま逃げてるだけじゃダメだってこと。


「じゃあ、またね!年末くらいに会えたら会おう。バイバイ」


「あ、うん。送ってくれてありがとう」


花純に手を振って家に入ると、気力だけでなんとか2階へと上がって部屋へ転がり込んだ。


倒れるようにベッドに身を投げ目を閉じる。


さっきの花純の言葉が、いつまでも頭の中をぐるぐる回っている。


このままじゃ……ダメだよね。


< 109 / 222 >

この作品をシェア

pagetop