キミの笑顔が見たいだけ。
「大丈夫……?色々聞いちゃったもんね。今日はもう帰ろっか。菜都の家って、ここから歩いてすぐだよね?」
花純は心配そうな顔であたしの顔を覗き込んだ。
「うん、すぐだよ」
「なら、送ってくから。歩くのがツラいなら、うちの親に車出してもらうけど」
「ごめんね……助かる。でも、歩いて帰れるよ」
「そう?じゃあ、ゆっくり歩いて帰ろ」
「うん」
申し訳なさを感じつつも、花純の言葉に甘えることにした。
今は誰かの優しさに頼っていたい。
そう思うほど、あたしの心は弱っていた。
「菜都、最後にこれだけは言わせて」
「うん、なに?」
「気持ちを押し殺したままだと、いつまでも諦めがつかないと思う」
矢沢君のことだと、聞かずともわかった。
「あたしは、やっぱりちゃんと話した方がいいと思うよ。そしたら、気持ちにケリがつくかもしれないじゃん!」
「…………」
花純の言う通り過ぎて、返す言葉が見つからない。
ホントはあたしだってわかってるんだ。
このまま逃げてるだけじゃダメだってこと。
「じゃあ、またね!年末くらいに会えたら会おう。バイバイ」
「あ、うん。送ってくれてありがとう」
花純に手を振って家に入ると、気力だけでなんとか2階へと上がって部屋へ転がり込んだ。
倒れるようにベッドに身を投げ目を閉じる。
さっきの花純の言葉が、いつまでも頭の中をぐるぐる回っている。
このままじゃ……ダメだよね。