キミの笑顔が見たいだけ。
秘めた想い〜晶斗side〜
「って、こんな女らしい傘……させるかよ」
春田んちの玄関先で弟に借りた傘を広げた瞬間、思わず苦笑してしまった。
赤地に白のハートが大量に散りばめられた、いかにも女子が好きそうな柄。
この傘をさしてる自分を想像するだけで、かなりの失笑もんだ。
ムリだろ、これは。
よりによって、なんでこんな傘を貸すんだよ。
意味わかんねー。
そう思いつつも、土砂降りの雨を見てるとささないで帰るわけにも行かず。
貸してもらったのにモンクは言えない。
とりあえず傘をさしてバス停までダッシュし、タイミング良く来たバスに乗り込んだ。
「お、晶斗じゃん。珍しいな、こんなところから乗って来るなんて」
「げっ、お前かよ」
「げってなんだよ、げって」
「お前の顔は見飽きてる」
「はぁ?失礼な奴だな」
空いたバスの車内でギャーギャー騒ぎ立てるこいつは、同じクラスの男友達。
名前は高垣 陽真(たかがき はるま)。
俺とこいつの両親は高校時代からの付き合いで今も仲が良く、昔から家族ぐるみで遊んだりしていた。
いわゆる幼なじみってやつだ。
女好きでかなりノリが軽く、俺とは正反対のキャラ。
とにかく明るくて、うるさい。
それでもなぜかかなり気が合うから、いつも一緒にいる。
たまにウザいけど、基本的にはまぁ……いい奴だ。