キミの笑顔が見たいだけ。


クリスマスイブの夜、お父さんは仕事で海生は幼なじみのナオちゃんとデートするということで、あたしはひとり駅の上の広場に来ていた。


風が吹いて凍えるほど寒いけど、大きなツリーや周りの木々に施されたイルミネーションがキラキラ輝いてとても綺麗。


カップルたちが寄り添いながら歩く中、7色に光るツリーの電飾をぼんやり見つめていた。


はぁ……綺麗。


それに、みんな幸せそう。


いいなぁ。


今この瞬間だけは現実を忘れていられる。


「春田さん?」


え……?


たくさんの人の声で賑わう中、男子の集団が目の前を通り過ぎようとした時だった。


その中のひとりがあたしの前で立ち止まった。


「た、高垣君……!」


「よっ、メリークリスマスイーブ!つか、ひとりで何してんの?」


やたらとテンションが高い高垣君は、声を張り上げながら笑顔を浮かべている。


一瞬矢沢君がいるかもしれないと思ってギクッとしたけど、ざっと見渡す限りではいないようだった。


周りにいるのは知らない人ばかり。


ホッとしたような、残念なような……。


「おーい、聞いてる?何してんのー?」


「え……?あ、ごめん……!」


「聞いてなかったのかよ!はは、ま、いーや。それよりさー、晶斗の奴、最近付き合い悪いんだよなー。今日も俺の誘いを断りやがって。春田さんが誘えば確実に出て来ると思うんだけど」


「そ、そうかな?そんなことないよ」


「そんなことあるよ。あいつ、春田さんだけには相当弱いから」


「…………」


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