キミの笑顔が見たいだけ。
「いや、変な意味じゃなくて……お袋が料理作り過ぎたって言ってたし。それに姉貴も子ども連れて帰って来てるし……2人きりってわけじゃないから、カン違いすんじゃねーぞ?」
「…………」
行けないよ。
行けるわけないじゃん。
突き離したんだよ?
それなのに……。
「家族水入らずでしょ?気持ちはありがたいけど、遠慮しておくね」
「遠慮することねーって。お袋も菜都に会いたいっつってたし。姉貴にも菜都のこと話したら、家に連れて来いってうるさくて」
「え?」
目を見開くと、矢沢君は突然気まずそうに顔をそらした。
「わり。俺んちの家族、俺がお前のことを好きだってみんな知ってるから」
ええー!?
「な、なにそれ……!」
なんで?
「成り行きで話したっつーか……わりーな」
「そ、そうなんだ……」
成り行きで話しちゃうようなことなんだ……?
あたしなら、恥ずかしくて海生やお父さんには話せない。
ん?
待って、ということは……。
「矢沢先生も知ってるの……?」
言った瞬間、しまったと思った。
あたしの方から矢沢先生の話を振るなんて、墓穴を掘ったようなもの。
ただでさえ診察室から出たところを見られたというのに、今度突っ込まれたら逃げられる自信がない。