キミの笑顔が見たいだけ。
「……ああ、付き合ってやるよ」
菜都の頼みなら、なんでも聞き入れてやりたい。
菜都の笑顔が見られるんなら、なんでもやってやる。
「よし、じゃあ切符買おう!あたしのおごりだからー!」
「バーカ。女におごってもらう趣味はねーよ」
菜都よりも早くポケットから財布を取り出し、券売機に5千円札を投入した。
大人2枚のボタンと、終点までの料金のボタンをすかさず押す。
出て来た切符を手に取り、菜都に1枚差し出した。
「いいよ、自分で買うから」
「もう2枚買っちまったから。行くぞ」
「あ、ちょっ」
戸惑う菜都の手に切符を握らせ、改札口を通過する。
「ま、待ってよ」
なんて言いながら、後ろから追いかけて来る足音に嬉しさが込み上げる。
考えてみれば、2人で出かけるのは初めてだもんな。
話の内容も気になるけど、菜都と一緒にいられるという事実の方がたまらなく嬉しい。
「矢沢君!待って」
「おっせーな」
動作がトロいというか、何をするにしてもゆっくりでそのくせ鈍臭い。
何もないところでよくつまずきそうになってるし、危なかしいったらねーよ。