キミの笑顔が見たいだけ。
けど、そんなところも愛しいと思える。
好きで好きでたまらない。
「やっと追いついた!」
「マジでトロいよな、お前」
「ひどいっ。これでも精いっぱい頑張ってるのに」
ムキになって言い返して来る姿までもが、可愛くてたまらない。
俺、マジでやべーな。
ガマン出来なくて、さり気なく菜都の手を取った。
すると、驚いたように勢いよく向けられる視線。
それに気付かないフリをして、駅のホームに向かって歩き出した。
途中、バレないようにそっと菜都の横顔を盗み見るとーー。
はは。
真っ赤だし……。
なんでそんな赤いんだよ?
俺のことが……好きなのか?
都合の良いように解釈したくなる。
「さすがに人多いね」
「クリスマスだからな」
「だね。矢沢君は誰かからプレゼントもらった?」
「親に財布買ってもらった。姉貴からお菓子の詰め合わせと、兄貴からはエロ……じゃなくて、雑誌!もらった」
あぶね。
危うく暴露しちまうところだった。
クソ兄貴、自分が読み終えていらなくなったお古を俺に回しやがって。
爽やかな成りをしてるくせに、実はドSでかなりの女泣かせ。
その本性はオヤジと俺しか知らない。
「矢沢君ちの家族って仲良しなんだね。優しいお姉さんやお兄さんがいていいな」
「いやいや。姉貴や兄貴がくれるのなんか、マジでくだらないもんばっかだし」
「えー、そう?でも、羨ましい。あたしなんて、お父さんから現金もらっただけだよ」
「へえ、いくら?」
「5万円」
「すげーな」
「これが最後だからだろうけど」
「?」
菜都の言葉に首を傾げる。