キミの笑顔が見たいだけ。
「最後って……?」
「あ、ううん。なんでもないの」
なんでもないって……そんな風には聞こえないっつーの。
「あ、この電車に乗ろう」
タイミング良くホームに滑り込んで来た電車を指差して、菜都が笑った。
無邪気なその笑顔に胸が熱くなる。
「矢沢君、早く」
腕を引っ張られてハッとする。
見惚れてる場合じゃねー。
「お、おう」
人の波に呑まれながら電車に乗り込み、そのまま奥へ押し込められた。
ギュウギュウ詰めの車内に、小柄な菜都は埋もれそうになってる。
俺が守らないと。
菜都の腕を引っ張ってドアの前に立たせた。
覆いかぶさるように菜都の顔の横に手を付き、押し潰されないように力を入れる。
「ご、ごめんね……ありがとう」
俺を見上げて照れたように頬を赤くする菜都。
正直、密着しすぎててやべー。
周りに人がたくさんいるってのに、理性が飛びそうになる。
やべー……。
このままで大丈夫かよ、俺。
ドキドキと高鳴る鼓動。
だけど密着した菜都の左胸からも、コート越しに大きな拍動が伝わって来る。
俺にドキドキしてんのか?
なんで……だよ?
なぁ……。