キミの笑顔が見たいだけ。


「矢沢君……?どうしたの?」


「なにがだよ?」


「なんだか、苦しそうな顔してる。あたしを守ってくれてるからだよね?ごめん……」


「ちげーよ、そんなんじゃない」


菜都の気持ちが知りたい。


それだけなんだ。


だって、どう見たって俺のことが好きとしか思えないだろ。


「すげえ好きだ」


ガマン出来なくなって耳元で囁いた。


……好きだ。


動揺したように揺れる大きな瞳と、キュッと一文字に結ばれた唇。


「もう……どうしようもねーんだって」


さらに赤く染まった頬と耳。


いくら言っても、菜都は俺の目を見ようとしなかった。


……聞いてんのかよ?


好きだっつってんのに、こいつは。


スルーかよ。


いや……わかってたけど。


どんだけ好きだと伝えても、菜都は俺の気持ちに応えようとしない。


赤くなったり動揺したりするくせに、ズルいんだよ。


けど……俺の方がもっとズルいよな。


菜都はもう俺と関わりたくないのに、しつこく絡んで困らせてる。


想いを伝えれば伝えるほど、困らせることをわかっててやってんだ。


でも、もうマジでどうしようもない。


いくら伝えても、お前に届くまでは諦められそうにねーんだよ。


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