キミの笑顔が見たいだけ。


それからどれくらい経ったのかはわからない。


いつの間にか、車窓からの景色がどんどん田舎町の風景に変わっていた。


辺りは真っ暗でなにも見えない。


こんな場所、来たことねーよ。


それに比例するように乗客も減って、ちらほら空席が目立っている。


「向こう……座ろっか」


「……だな」


菜都はやっぱり俺の目を見ない。


うつむき気味に歩いて、2人掛けの席にちょこんと座った。


そのあとを追って、俺も隣に座る。


『次は終点、雨笠ー、雨笠駅です。お降りのお客様は、お忘れ物のないようご注意下さい』


車内に響いたアナウンス。


もう終点って、早すぎだろ。


最初に乗った大きな駅とは違って、だんだんローカルで小さい駅に変わって来てる。


周りにはなにもなさそうだし、駅員がいるのかすら微妙なほどの田舎だ。


時刻は20時過ぎ。


あれから約2時間以上経ってるってマジかよ。


「次、降りよう」


「おう」


ま、終点だからな。


どっちにしろ、降りなきゃいけない。


「わ、さむーい!見て見て、雪が降ってるよ!」


菜都はまるで俺の告白なんてなかったかのように、無邪気にはしゃいでいる。


ハラハラと舞い落ちる粉雪が、俺の心を切なくさせる。


菜都がムリをしてはしゃいでいるように見せているのは、一目瞭然だった。


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