キミの笑顔が見たいだけ。


菜都がそんな顔で笑うたびに、苦しくて切なくてーー。


胸が締め付けられる。


『お待ちのお客様にお知らせします。次に到着します電車はーー』


ホームに響くスピーカーの声。


どうやら次に来るのが最終電車のようだ。


「矢沢君……あたしね」


スピーカーの声が止んだ途端、さっきまでの明るいテンションとは違う小さな菜都の声が聞こえた。


嫌な予感がする。


聞きたくない。


なぜだかわからないけど、そんな風に思ってしまった。


「あたし……死ぬの」


ーードクン


し、ぬ……?


は……?


なに、言ってんだ……?


頭を鈍器で殴られたかのような衝撃が走った。


目の前がクラクラして視界が揺れる。


「脳の……病気、なんだ。今年の春にね……余命は長くて1年だって……矢沢先生に言われたの」


「は……冗談、だろ?」


ありえねーよ……。


なに、言ってんだ……?


菜都が……し、ぬ?


「冗談だったら、よかったのにね……。残念ながら、ホントなんだ」


菜都は至って冷静で、微笑まで浮かべている。


普通笑っていられるか?


自分が死ぬってわかって、笑っていられるはずがない。


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