キミの笑顔が見たいだけ。


「俺を振るための……口実だろ?俺が嫌なら……はっきり、嫌いだって言えばいいだろ?縁起でもねーこと……言ってんじゃねーよ」


自分でもわけのわからないことを言ってるっていう自覚はあった。


だけどグチャグチャで、こうでも言わないとやってられなかった。


ウソだと……冗談だと思いたかった。


「冗談でこんなこと言わないよ……!」


真剣さを増して行く菜都の態度が、やけに重苦しくなって行く空気が冗談ではないことを告げている。


ウソだ……。


俺は信じない。


信じたくねーよ……んなこと。


だって、そうだろ……?


「来年の春が来たら、あたしは……」


その先の言葉は……聞きたくない。


「死ぬの……」


聞きたくねーって、言ってんだろ……?


「……っ」


冗談だと思いたかった。


けど、冗談じゃないのは一目瞭然で。


頭ではわかってるのに、心の中がグチャグチャでなにも考えられない。


「だから……ごめんね」


「……っ」


なんだよ、ごめんって。


何に対しての言葉だよ……っ。


「矢沢君はこれから先、色んな人と出会うと思う。未来のないあたしといても……幸せにはなれないから……っ。だから、あたし以外の誰かと幸せになって……?」


なんだよ……それ。


菜都以外の誰かって……。


俺は……お前の気持ちが知りたいだけなのに。


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