キミの笑顔が見たいだけ。
*第4章*
そばにいさせて
長いようで短かった冬休みが明け、少し緊張しながら学校へ向かった。
はっきりきっぱり言ったんだ。
もう矢沢君はあたしに声をかけて来ることはない、はず。
クリスマスイブのあの日……好きだってことは言えなかったけど。
でも、これで……よかったよね?
あと3ヶ月……たった3ヶ月。
あとどれくらい、学校に通えるかな。
足が動くかな。
息が出来るかな。
普通の生活が出来るかな。
出来なくなる日はきっと、もうそんなに遠くないはず。
……怖い。
「は、春田さん……」
校門をくぐった瞬間、後ろから誰かに呼び止められた。
振り返ると、見たことのない男子が緊張したような面持ちで立っていて。
目が合うと、照れ臭そうに頬をかいた。
「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」
「は、はい……」
なんだろう……?
疑問に思いつつ、連れて来られたのはひと気のない校舎裏。
日陰になっててかなり肌寒い。
「あ、あの!俺、入学した時から春田さんのことを可愛いなって思ってて……!よかったら俺と付き合ってくれないかな?」
「え?」
「なかなか声をかけられなくてごめん!春田さん大人しいのに、矢沢と噂されてるのがあまりにもかわいそうで。俺と春田さんならお似合いだと思うんだけど……!ってか、絶対お似合いだから」
「えーっと、あの……」
意味がわからないんですけど……。
「矢沢なんかやめて、俺と付き合って」
ジリジリと歩み寄って来る目の前の男子。
目が笑っていないというか、なんとなく表情が固くて怖い。
「春田さん……俺、マジでキミのことが好きなんだ。サララちゃんにそっくりで可愛い」
「サ、サララちゃん……?」
「アニメの中の女の子だよ。春田さんに激似なんだよ。だから、サララちゃん……俺のものになってよ」
や、やだ。
なんなの?
あたしはサララちゃんじゃないのに。
気持ち悪い……!
逃げようとしてみても、足が竦んで動かない。