キミの笑顔が見たいだけ。


「わ、わかったよ!もう近付かない!サララちゃんコレクションは、命よりも大切な俺の宝物なんだ……!」


「だったら今すぐここから消えろ」


「は、はいぃぃ……っ!」


矢沢君の威圧感にすっかり怯えた様子で、男子はすぐさま校舎裏から姿を消した。


よっぽど動揺していたのか、途中何度もつまずきながら必死に走っている。


その光景をポカンと見つめていると、すぐそばから視線を感じた。


「大丈夫か?」


心配そうな表情を浮かべながら、あたしに手を差し伸べる矢沢君。


「あり、がとう……助かった」


「あいつ、マジありえねー。また変なことされたらすぐ俺に言えよ」


まだ怒っているのか、矢沢君は男子が走り去った方角に鋭い視線を向ける。


「だ、大丈夫、だと思う……!よっぽど、コレクション壊されたくなかったみたいだし?」


あはは、とムリに笑顔を作った。


正直、矢沢君が助けてくれたことにもビックリしてるし、今起こったことにもまだ混乱してる。


でも、よかった……。


矢沢君が来てくれなきゃ、今頃どうなってたかわからない。


なんだかホッとしたら急に力が抜けて、校舎に背を預けるように持たれかかった。


「マジで大丈夫か?あいつになんかされた?」


とっさに腕で支えてくれた矢沢君。


やっぱり温かいな、矢沢君の体温。


「大丈夫。ホッとしたら、力が抜けちゃって……」


「あいつ、もっと殴ってやればよかった」


「あは、は。ダメだよ、暴力反対……」


「…………」


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