キミの笑顔が見たいだけ。
気まずい沈黙が流れる。
あの日、矢沢君に呆れられても仕方のないことをしてしまったはずなのに、あたしを助けてくれた。
きっと、矢沢君はあたしに言いたいことがたくさんあるはず。
だって、そんな顔をしてる。
「ちょっといいか……?」
ほらね、やっぱり。
これから何を言われるんだろう。
怖いけど、逃げたくない。
ちゃんと聞かなきゃ。
小さく頷くと、矢沢君はあたしと同じように校舎に背を預けて座り込んだ。
そして、「風邪引くから」と言って自分の首に巻いてたマフラーを、あたしの膝にそっと掛けてくれる。
そんな些細な優しさに胸が疼く。
惑わされちゃダメ。
ドキドキしちゃダメ。
嬉しいと思っちゃ……ダメ。
「俺、あれから色々考えた。あん時は頭がグチャグチャで、理解なんか出来なくて、でも苦しくて……」
「…………」
「信じたくなかったんだ。菜都がいなくなる……なんて。けどさ、日にちが経つにつれてだんだん理解して……俺なんかより、菜都の方が苦しいのに……なに悩んでんだって。俺がこんなんじゃダメだろって。そんで、俺なりにどうしたいか本気で考えた」
「…………」
あの時と同じように、矢沢君の声が震えてる。
「俺は……何があってもお前の味方でいたい」
「やざ、わ君……」
「同情なんかじゃなくて、ただ」
「……っ」
「どんなことがあっても、菜都のことが好きだからーー」
スカートの上で硬く握り締めた拳に、矢沢君の手が重なった。
「大好きだから……っ、どうやっても諦められないから。だから、ずっとお前のそばにいたい」
「だって……っあた、しは、死ぬんだよ……?いなく、なるんだよ?あたしなんかのそばにいても……矢沢君は……幸せになれないのに……っ」