キミの笑顔が見たいだけ。
「好きとかじゃ……ねーし」
他の女子とは何となく違う気がするってだけだ。
あいつの周りだけキラキラ輝いているように見えるのもそのせいで、特別な感情があるわけじゃない。
笑いかけてほしいと思った理由は……わかんねーけど。
つーか、わかりたくもねーし。
「素直に認めろよ。本当は好きなんだって」
「なわけねーだろ。俺が誰かを好きになるとかありえねーよ」
「はぁ?なんでだよ?可愛いなぁとか思ったりしないわけ?気付いたら目で追ってたり、常に視界にいたり」
「はぁ……?そんなこと」
気付いたら目で追ってんな……。
でも。
ある……とは言えない。
言ったらからかわれるのは目に見えてる。
こいつにからかわれるのだけは、気にくわない。
それに、俺が恋とか好きとか似合わねーだろ。
そんな自分を想像しただけで全身がむず痒くて鳥肌が立つ。
「へえ、可愛いとか思ったりするわけか。常に視界にいたりもするんだ?」
陽真がニヤリと笑いながら俺の顔を覗き込む。
「な、なわけねーだろ……!変なこと言ってんじゃねーよ!」
「ぷっ。お前、わかりやす。そんなにムキにならなくても!つーか、顔真っ赤だし!ウソつくのヘタすぎな!ははっ」
「…………」
お腹を抱えてケラケラ笑う陽真を鋭く睨み付ける。
まったく反省する素振りはなく、涙まで浮かべて笑ってやがる。
なんなんだよ、こいつ。
「いやー、まさか晶斗が恋をするとはねー!こりゃ多くの女が泣くわ」
「だから……そんなんじゃねーって言ってんだろ!」
否定すればするほど逆効果だったようで、陽真は面白おかしく俺をからかって来る。
マジでこいつだけは……どうしようもねーな。
だけどなぜか、右手に持った春田の傘がやけにジンジン熱くて。
あいつの笑顔が頭から離れなかった。