キミの笑顔が見たいだけ。
順番待ちをしている時間さえもが、とても心地いい時間だった。
好きな人と過ごせるって、こんなに幸せなことなんだ。
だから今は、余計なことは考えないで楽しもう。
「わー、もう真っ暗だぁ。見て見て!夜景が綺麗だよ」
ゴンドラの中から外を指さす。
キラキラ輝く明かりがすごく綺麗。
「はしゃぎすぎな。子どもみてー」
そんなあたしに、矢沢君がクスッと笑った。
「う、いいじゃん。嬉しいんだもん」
ムッと唇を尖らせる。
子ども扱いされたくない。
「はは、スネんなって」
「ス、スネてないもん。もういいよ、矢沢君なんて。ひとりで夜景観るもーん……」
プイと顔をそらして、窓に張り付いた。
この辺はビルが多いから、ホントに夜景が綺麗。
この景色を、ちゃんと目に焼き付けておこう。
……忘れないように。
ーーガタッ
「え……?」
ゴンドラが小さく揺れたかと思うと、背後に矢沢君の気配がした。
「スネんなよ。可愛いと思って見てただけだから」
「……っ」
後ろから抱き締められているような格好に、鼓動が速く大きくなる。
矢沢君はあたしの肩に顔を埋めて、窓ガラス越しにあたしを見つめてクスッと笑った。