キミの笑顔が見たいだけ。
まともに顔を見られなかった。
ど、どうしよう……。
どうすればいいの?
「菜都」
「な、なに……?」
頬に添えられた手に体がピクッと反応する。
「ごめん」
「なんで、謝るの?」
「いや、なんとなく。嫌だったかなって」
「……嫌なわけないよ」
だって、好きだから。
あたしも、晶斗に触れたいって思った。
「ならよかった」
そう言って小さく笑った晶斗に、胸がキュッと締め付けられた。
初めてのキスは、温かくてロマンチックで。
きっと、今日以上に幸せな日なんてこない。
忘れないように、ひとつひとつ記憶の中に閉じ込めておく。
そうすれば、何があっても大丈夫なはずだから。
1周はあっという間に終わってしまい、気づけばもう時間も遅い。
まだ帰りたくないよ。
もっとずっと、晶斗といたい。
離れたくない。
「そろそろ帰るか」
「あ……うん、そうだね」
でも、そんなワガママは言えない。
困らせるだけだよね。
「手、つないでもいい……?」
家の方向に向かって歩き出した晶斗の横顔を恐る恐る見上げる。
「あー……うん。ほら」
一瞬だけ目が合うとすぐにそらされたけど、晶斗の手はしっかりあたしの手を握ってくれた。
「へへっ、ありがとう」
「……べつに」
照れたような声。
あたしまで恥ずかしくなって、頬がゆるむ。
あー、幸せだなぁって。
ずっとこうしていたいなぁって、ふと思った。