キミの笑顔が見たいだけ。
キミの温もり
「きゃー、噂の菜都ちゃんね。待ってたよー!上がって上がって」
「は、はい……!お邪魔します」
ドキドキ、ワクワク。
あたしは今日、晶斗に誘われて初めて矢沢家にやってきました。
カチンコチンに固まるあたしを、晶斗のお母さんは優しく笑って出迎えてくれた。
「どうぞー、そんなに緊張しなくていいからね〜!」
「は、はいっ」
と言いつつも、そんなわけにはいかない。
晶斗のお母さんは小柄で可愛らしくて、笑顔がとても素敵な人だった。
ものすごく優しそうで、笑った顔が晶斗と少し似てる。
「あ、あの、これっ……シフォンケーキなんですけど、よかったらどうぞ」
「わ〜、わざわざよかったのに。ごめんね。でも、ありがとう。シフォンケーキ大好きなの」
「それなら、よかったです」
ペコッとお辞儀をしてから、お家にお邪魔した。
リビングに行くと、晶斗の家族が揃っていて。
さらには、お家の中もすごく広くて綺麗で。
余計に緊張してしまう。
「こっちに座って。っていうか、ほんとに晶斗の彼女なの〜?晶斗には可愛すぎるよ。もったいない」
「うっせーな」
お姉さんの隣でムッと膨れる晶斗が子どもみたいでなんだか可愛い。
「こいつ、学校ではどんな感じ?家では調子こいてクールぶってるけど、中身はただのガキだから」
「クソ兄貴、菜都に変なこと言ってんじゃねーよ」
家族の中にいる晶斗を見ていると、いつもはクールなのがウソみたいにイジられている。
末っ子だから子どもみたいに見えるし。
……可愛い。
なんて。
晶斗と血が繋がっているだけあって、お姉さんもお兄さんもとても綺麗でカッコよかった。
「せ、先生、お邪魔します」
「いらっしゃい。遠慮せず、ゆっくりしてくといいよ」