キミの笑顔が見たいだけ。


「とりあえずこっち座れよ」


「あ、うん」


2人掛けのソファーの端っこにちょこんと座ると、テーブルの上に晶斗が飲み物を置いてくれた。


あたしの好きなレモンティー。


覚えてくれてたんだ。


そんなささいなことがすごく嬉しい。


「今度、菜都の母さんの墓参りに行かないとな」


「えー?うちのお母さんの?」


「菜都を生んでくれてありがとうございますって伝えたい」


「晶斗……」


あたしの隣に座り、手をギュッと握ってくる。


それだけで必要とされている気がしてくるから不思議。


「あたし、今までなんのために生まれてきたんだろうって思ってたけど……晶斗に出逢うためだったのかなぁ」


もしそうなら、こんなに幸せなことってないよね。


「俺もそう思う」


「あはは……なんか嬉しい」


「つーか、俺もそうだから」


「え?」


「菜都に出逢うために生まれてきた」


「……っ」


照れくさそうに頬を掻きながらそんなことを言う晶斗の横顔に、胸が締め付けられる。


そんな風に言わないで。


晶斗はこの先もっとたくさんの人に出会って、大人になって行くんだから。


あたしのことなんて、忘れてくれていいんだよ。


あたしは今、晶斗とこうしていられるだけで幸せなんだから。


< 149 / 222 >

この作品をシェア

pagetop