キミの笑顔が見たいだけ。
「とりあえずこっち座れよ」
「あ、うん」
2人掛けのソファーの端っこにちょこんと座ると、テーブルの上に晶斗が飲み物を置いてくれた。
あたしの好きなレモンティー。
覚えてくれてたんだ。
そんなささいなことがすごく嬉しい。
「今度、菜都の母さんの墓参りに行かないとな」
「えー?うちのお母さんの?」
「菜都を生んでくれてありがとうございますって伝えたい」
「晶斗……」
あたしの隣に座り、手をギュッと握ってくる。
それだけで必要とされている気がしてくるから不思議。
「あたし、今までなんのために生まれてきたんだろうって思ってたけど……晶斗に出逢うためだったのかなぁ」
もしそうなら、こんなに幸せなことってないよね。
「俺もそう思う」
「あはは……なんか嬉しい」
「つーか、俺もそうだから」
「え?」
「菜都に出逢うために生まれてきた」
「……っ」
照れくさそうに頬を掻きながらそんなことを言う晶斗の横顔に、胸が締め付けられる。
そんな風に言わないで。
晶斗はこの先もっとたくさんの人に出会って、大人になって行くんだから。
あたしのことなんて、忘れてくれていいんだよ。
あたしは今、晶斗とこうしていられるだけで幸せなんだから。