キミの笑顔が見たいだけ。
そう言いながらも、あたしの口元はニヤけてしまう。
だって、可愛いんだもん。
スネるのが目に見えてるから、言わないけど。
「あとで笑ってられなくさせてやるからな」
「え〜、なにそれ」
「おぼえとけよ」
「やだー!」
冗談っぽいやり取りに笑って、晶斗の行動にドキドキさせられて。
一緒にいると、病気のことを忘れられる。
心から笑えるあたしがいる。
だからもう余計なことは考えない。
「このあと時間あるか?」
「え?うん。どうしたの?」
「連れて行きたい場所があるんだ」
連れて行きたい場所?
どこだろう?
疑問に思いながら頷いてみせた。
「よっしゃ、じゃあ行くか」
唇の端を持ち上げて嬉しそうに笑う晶斗。
「どこ行くの?」
「着いてからのお楽しみ」
「えー、気になるじゃん。教えてよ」
「ヒミツだよ」
結局、どこに行くか教えてくれなくて。
ドギマギしながら晶斗に付いて歩いた。
そして途中でバスに乗ったりもして、たどり着いたのは住宅街の中の高台にある大きな公園。
展望台からは景色が一望できるようになっている。
「子どもの頃、こっからの景色を観んのが好きでよく来てたんだ」
「そうなの?」
あは、なんだか意外。
男の子って公園ではしゃぎ回ってるイメージなのに。
でも、晶斗のことが知られて嬉しい。
「わ、虹だ!」
ふと見上げた雨上がりの空に七色の虹が浮かんでいた。
「虹なんて久しぶり。きれ〜!」
「だな」
「うん。あたしもね、景色を観てボーッとしたりするのが好きだよ」