キミの笑顔が見たいだけ。
陽真はなにも知らないけど、勘が鋭くて触れてほしくないところを突いてくる。
「なにムキになってんだよ。余計怪しいぞ」
「別に……そんなことねーよ」
菜都は大丈夫なんだから、ムキになる必要はない。
だけど、なんでこんなにも余裕がなくなってるんだ?
本当は心のどこかで菜都が言ったことを考えてるからなんじゃねーのか?
『本当はわかってるんでしょ……?』
わからねーよ。
わかりたくもねー。
だって、信じるのをやめたら菜都は戻ってこなくなる。
だから俺は、どんな状況になっても菜都との未来を信じるって決めたんだ。
菜都が信じなくても、俺は信じる。
菜都と一緒にいられる未来を。
命を。
授業中、ポケットの中でスマホが震えた。
『姉ちゃんが入院することになりました』
海生からのメッセージに心臓がドクンと大きな音を立てた。
入院って……なんだよ。
そんなに悪いのか?
気がつくとスマホを握る手に力が入っていた。
「では次の問題を、矢沢くんーー」
こんなことをしている場合じゃない。
のんきに授業なんか受けてられるかよ。
ーーガタッ
立ち上がってカバンを掴むと、一目散に教室のドアへ向かった。
「矢沢くん、どこ行くの?」
「気分悪いんで早退します」
教卓に立つ先生の顔も見ずに、俺は駆け足で教室を出た。