キミの笑顔が見たいだけ。
その足で昇降口へと急ぎ、学校を後にする。
目指すはオヤジが働く病院。
学校からだと走って15分くらいのところを、全速疾走したおかげで10分で病院の近くまでたどり着いた。
「はぁはぁ」
冬の風は冷たく、容赦なく肌に突き刺さる。
けれど今はその冷たさが心地いい。
額にはうっすらと汗が滲んでいた。
「くそっ、あっちー……っ」
走ったせいか心臓がバクバクしていて、落ち着かない。
病院の玄関から中に入ると、待ち合い室に海生の姿があった。
「海生……!はぁっ」
くそ、まだ息が上がってやがる。
どんだけ体力ないんだよ、俺は。
情けねーな。
学ラン姿の海生は途中で学校を抜け出してきたのか、マフラーが乱雑に巻かれてコートのボタンもとまっていない。
「矢沢くん!くると思って待ってました」
「ああ、で、菜都は?」
人が多い待ち合い室では、制服姿の俺たちはかなり浮いている。
「今ようやく眠ったとこです」
「そうか……」
はぁ。
とりあえず、よかった。
今すぐどうこうってことではないらしい。
「俺、今日は入試のことでどうしても学校に戻らなきゃいけなくて……矢沢くん、菜都のそばにいてやってくれませんか?」
申し訳なさそうに俺を見つめる海生の目は、気のせいなのか少し赤かった。
なんだよ、どいつもこいつも。
信じてねーのかよ。
菜都は大丈夫だって。