キミの笑顔が見たいだけ。


「わかった、任せろ」


そんな海生の肩に手を置き、微笑んでみせる。


「助かります」


すると、海生も安心したようにホッと息をついた。


「菜都の病室は?」


「5階の5011です。廊下の突き当たり」


「了解。じゃあ早速行くから、お前は学校に戻っていいぞ」


そう言い残し、俺はエレベーターがあるさらに奥へと進む。


出産のために姉ちゃんが入院していた時とは、まるで雰囲気が違っているこの病院。


やけに心臓がドクンドクンとうるさいのは、なにかのまちがいだ。


菜都に何かあるなんて、思いたくねー。


ーーチン


エレベーターが5階に着くと、なんだか妙にそわそわして歩くペースが遅くなった。


大丈夫だ。


大丈夫に決まってる。


菜都は助かる。


自分の心にそう言い聞かせて、教えてもらった病室へと足を運んだ。


ドアに手を伸ばそうとしたその時ーー。


「正直、かなり厳しい状態です」


部屋の中から、オヤジの声が聞こえた。


かなり……厳しい状態。


それは素人の俺でもわかる言葉だった。


胸に激しい衝撃が走る。


なん、だよ。


なんなんだよ。


やめろよ。


「なにか、なにか……方法はないんですか?菜都が助かる方法は」


「前にもお話した通り、あるにはあります。ですが、それにはかなりのリスクがあることをお話しましたよね」


菜都の父親とオヤジの会話を黙って立ち聞きしている情けない俺。


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