キミの笑顔が見たいだけ。


一緒にいて、どれだけ元気づけられたかな。


たくさん助けられたよ。


「笑顔でって……ムリ、だろ」


「晶斗が笑ってくれると、あたしも笑顔になれるんだよ」


普段はクールなのに、笑うと子どもみたいで。

無邪気なその笑顔が好きだった。


大好きだった。


「わかっ、たよ。じゃあ俺も、ひとつだけ言わせて」


涙をこらえて振り向くと、ぐっと顔を寄せてこられて思わずドキッとする。


ふわふわの茶髪と、髪の毛の隙間から見え隠れする小さなピアス。


耳にかかる吐息に、くらりとめまいがしそうになる。


「待たないって約束する。だから……っ絶対に……絶対に帰ってこい」


力強くて真剣な瞳が泣きそうに揺れていた。


不安なのはあたしだけじゃない。


晶斗も同じなんだ。


「うん……わかった」


10%の望みを捨てたくない。


「次に会う時は、笑顔でって約束しろよな」


大きな手のひらに頭をクシャッと撫でられた。


この手の温もりを忘れない。


ツラい時、悲しい時、苦しい時、逃げ出したくなった時ーー。


思い出して頑張るよ。


絶対に忘れない。


「笑顔で、ね」


「俺は……待たないからな。待ってねーから、絶対に帰ってこい」


「……っ」


待ってるから、絶対に帰ってこい。


そんな風に聞こえるのは、あたしのカン違いなのかな。


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