キミの笑顔が見たいだけ。
ゆっくり顔を上げた俺の目に、涙を拭うおじさんの姿が映った。
「入りなさい。菜都は部屋の中だ」
「ありがとう、ございます……」
どうしておじさんが泣いているのか気になったけど、その理由は考えないようにしてドアを開ける。
心臓の音がやけにうるさい。
久しぶりに会うから、緊張しているだけだ。
菜都になにかあるなんて思っていない。
まず最初にベッドが目に入った。
頭元はテレビ台が邪魔をして顔はよく見えない。
掛布団が盛り上がっているから、ベッドにいるんだろう。
ーーピッピッピッピッ
規則正しく響く心電図のモニター音。
バクバクする鼓動を落ち着かせるように、ゆっくり一歩ずつ踏みしめながら進む。
テレビ台の奥にある菜都の顔が徐々に見え始めた。
「菜都……」
色白の綺麗な肌。
菜都は目を閉じて静かに横たわっている。
寝てる、のか……?
だけどなぜか様子がおかしい。
口には人工呼吸器がついて、鎖骨部分には点滴の管が繋がっていた。
痩せこけた頬と、ピクリとも動かない体。
「菜都……?」