キミの笑顔が見たいだけ。
矢沢君に見つめられると、全身に熱が注がれたように熱くなる。
ドキドキして胸が苦しくなって、うまく息が出来ない。
あの雨の日から、こうして目が合う回数が極端に多くなった。
目が合う度にドキドキして落ち着かなくなる。
どうしてこんなに胸がざわつくんだろう……。
「矢沢君ってさぁ、よく菜都のこと見てない?好きなのかもよ、菜都のこと」
「!?」
イタズラッ子のようにニンマリ笑う花純は、あたしたちが見つめ合っていることに気付いたようだ。
絵に描いたような優等生の花純は、学年のマドンナでスタイル抜群で美人で。
どこを取っても劣っているところがないほど、なんでも完璧にこなす天才肌。
愛嬌があって可愛い一面もあれば、サバサバしている面もあったりして。
明るくて無邪気な性格が可愛い、あたしの一番の大親友。
「な、なに……言ってんの!ありえないから、そんなこと!」
思わず身振り手振りで必死に否定する。
顔が熱くて、手でパタパタ仰いだ。
花純は突然突拍子のないことを言い出すから困りもの。
矢沢君が……あたしを好きだなんて。
そんなの、天と地がひっくり返ってもありえないよ。
「ありえるでしょ。今、すっごい噂になってるし。少なからず、菜都も矢沢君を意識してるんじゃないの?」
「そ、そんなこと……!」
ある……とは素直に言えない。
だって、すごく恥ずかしいし照れくさいもん。