キミの笑顔が見たいだけ。
スーツ姿の陽真が卒業証書を手に、ニヤニヤしながらやってきた。
冷たい風がサーッと吹いて、桜の花びらが辺りに舞う。
「盗み見してんじゃねーよ」
「たまたま通りかかったんだよ。つーか、マジで綺麗だな」
桜の木を見上げながら、優しく微笑むその横顔。
「今まで、いろいろありがとな……」
普段こいつに礼なんて言い慣れてないから、なんだか気恥ずかしい。
ガラにもないことを言ってしまったのは、今日が卒業式っていう日だからだと思いたい。
目を見開きながら、じっと俺を凝視する陽真。
「わかってるよ、俺らしくねーって言いたいんだろ?」
照れくさいから、そんなに見るんじゃねーって。
「いや、お前はマジでよくやったと思うよ。すげーよ。マネできねーもん、俺」
絶対にからかわれると思ったのにそんなそぶりは一切なく、むしろ尊敬の眼差し。
似合わねーな、こいつも。
今日という日が特別だからなのか、はたまたそれだけ俺たちが成長したということなのか。
「誰かのためにそこまで必死になれるお前を、心の底から尊敬してる」
「はは、サンキュー」
「出発は明日だろ?見送りに行くからな」
「いいよ、べつに」
「バーカ、よくねーよ」
寂しそうに笑う陽真に、それ以上何も言えなかった。