キミの笑顔が見たいだけ。
アメリカでの日々は、これまでの4年間とは比べものにならないほど目まぐるしく過ぎていった。
気づけばもう、卒業間近。
あれから3年近くが経ったなんて、信じられない。
文化の違いに苦労させられることや大変なことも多かったけど、今ではそれもいい思い出になった。
「この病院に就職することが決まったぞ。俺がちゃんとリハビリしてやるからな」
未だに眠り続ける菜都の頬をそっと撫でる。
なんとか自力で呼吸するまでに回復して人工呼吸器は外れたものの、菜都は一向に目を覚まさない。
ピクリとも動かない。
でも、菜都の体は温かい。
爪や髪だって伸びるし、身長も伸びた。
顔つきが少し大人っぽくなったようにも見える。
それは全部、生きてる証拠だ。
ずっと眠ったままだからなのか、透き通るように肌が白い。
くるんとなったまつ毛と、穏やかな寝顔。
すぐにでも起きてきそうな気がする。
「目ぇ……覚ませよ」
もう一度、菜都の笑顔が見たいんだ。
「早く、起きろ。いつまでも待ってるから……」
ためらいなく、菜都の頬に口づける。
ずっと変わらないその感触に、胸の奥が締めつけられた。
菜都を想えば想うほど、幸せなのにどうしてこんなに苦しくなるんだよ。