キミの笑顔が見たいだけ。


「なんか、わかんないん、だけどね……涙が、止まら、ないの……っ」


でもこれは、悲しみの涙なんかじゃない。


うまく言葉で言い表すことはできないけれど、温かい涙なんだよ。


生きててよかった。


きっとあたしは、この日のことを一生忘れない。


「よく、頑張ったな。マジでよかった」


「晶斗だって、泣いてる、じゃん」


「バカ、俺はいいんだよ」


「さっき、泣いてないって、言った」


「……バーカ」


拗ねたような口調で、照れくさそうに目を伏せる。


よく見ると、ずいぶん大人っぽくなったような気がする。


高校生の時とは違って髪も黒いし、ピアスだって見当たらない。


身長も伸びて、骨格が男らしくなったというか……。


すっかり大人の男性だ。


あたしの思い過ごし……?


そういえば、今は何年の何月何日なんだろう。


体が動かしにくいということは、長い間意識がなかったってことになる。


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