キミの笑顔が見たいだけ。
「とりあえず、目覚めたことを知らせてくるから」
疑問を口にする前に、晶斗は慌ただしく部屋を出て行った。
その時、ふと点滴のパックが目についた。
そこに貼られていたラベルに、英文字で名前と日付が書いてあった。
「うそっ……」
2027年……?
10年……。
そんなに長い間、意識がなかったってこと?
まさか。
そんなこと、あるはずないよ。
だって10年だよ……?
いくらなんでも信じられない。
ありえない。
手術をした日のことは、昨日のように覚えているっていうのに。
うまく頭が働かなくて、次第に動悸がしてきた。
待って。
焦っちゃダメ。
冷静になろう。
まだ決まったわけじゃない。
深呼吸を繰り返して、なんとか鼓動を落ち着かせる。
ーーバンッ
「菜都っ!」
大きな音を立てながら開いたドアにビックリして、目をやった。
血相を変えて入ってきたのは、青のスクラブの上から白衣を着て聴診器を首にかけたお医者さんらしき人。
でもどこかその人には見覚えがあった。
もしかして……。
「か、い……?」
「うん、そうだよ」
なんで、海生がここに……?
海生は受験があって、アメリカには来ていないはず。
ううん……そんなことよりも。
その格好は、いったいなに?
目の前の海生は明らかに昨日までの海生とは違って、晶斗同様立派な大人だ。
「目が覚めたんだな……っ」
わけがわからなくて混乱していると、そのあとに晶斗と病院のスタッフ数名がバタバタと部屋に入ってきた。