キミの笑顔が見たいだけ。


そこでこれまでのことを聞かされた。


やっぱりあたしは10年間ずっと眠りっぱなしだったらしい。


信じられなくて、ショックだった。


なんて言ったらいいのかわからず、なにも言えなかった。


とりあえずリハビリを頑張れば、歩けるようにはなるらしい。


それでも10年もの時間を失った悲しみや喪失感は大きい。


昨日まで高校生だったのに、もう大人だなんて信じられない。


晶斗も海生も1日で大人になったような気がして、変化に戸惑った。


鏡に映るあたしもそう。


髪の毛が伸びて、顔つきが少し変わっていた。


その日の夜はなかなか寝付くことができず、ただぼんやり考え事をしていた。


それから一夜明けて、リハビリの時間がやってきた。


起き上がることのできないあたしはベッド上でのリハビリだったけど、手を抜かずに精いっぱい励んだ。


今日の担当は晶斗だ。


これがなかなかスパルタで、結構厳しかった。


「いろいろ混乱しただろ?」


リハビリを終えて休憩していると、昨日のことについて話し出した。


「そう、だね」


「俺、おっさんになっててビビった?」


心配そうにあたしの顔を覗き込みながら、冗談っぽく笑う。


きっとあたしがまだ戸惑っていることに、気づいてくれているんだ。


「そんなこと、ないよ。晶斗は、カッコ、いい……」


そして、優しい。


だって、10年だよ?


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