キミの笑顔が見たいだけ。
「これもさっき受け取ったばっかで……」
そう言ってジャケットのポケットから取り出したのは、小さな四角い箱だった。
「何もかもギリギリで申し訳ないと思ってる。でも、もうお前と離れるなんて考えられねーんだよ」
「えっ……」
それって……。
突然のことに戸惑っていると、晶斗は箱を開けて中身を取り出した。
「日本で仕事も決めた。苦労させないって誓うから、俺と結婚してほしい」
「え……あ」
ほんといきなりすぎて、思考回路がうまく働かない。
恥ずかしすぎて、顔がものすごく熱い。
まさかこんな展開になるなんて、思ってもみなかった。
でも、嬉しい。
自然と頬がゆるんだ。
「えっと、あたしでよければ……よろしくお願いしますっ!」
恥ずかしさをごまかすように、晶斗の胸に飛び込んだ。
「マジ、で?」
あたしの体を抱きしめ返しながら、耳元で力なく囁く。
緊張していたのか、体が小さく震えていた。
「もちろん!あたしも、離れたくないっ。大好きだよ」
「はは、俺も」
あたしたちは人目もはばからずに抱きしめ合った。
ずっと一緒にいられる。
もう離れたくない。
離さない。
「菜都の笑顔は、俺の手でずっと守っていくから」
「あり、がとう」
10年後も、20年後もーー。
ずっとずっと、キミの笑顔をそばで見ていたい。
だから、ずっと一緒にいてね。
*キミの笑顔が見たいだけ。*
《fin》