キミの笑顔が見たいだけ。
「おい、陽真。なにやってんだよ」
ーードキッ
高垣君の後ろから矢沢君がこっちに来るのが見えた。
両手をポケットに突っ込んで、不機嫌なオーラを放ってる。
でもなぜか、そんな矢沢君にドキドキしているあたし。
やっぱり、高垣君の時とは全然違う……。
「はは、春田さん顔真っ赤。晶斗同様、わかりやすいなぁ。好きなの?あいつのこと」
クスッと笑われて、コソッと耳打ちされた。
「ち、ちが……っ」
「はは、わかりやす。隠さなくていいから」
違うよ、好きとか……。
そんなんじゃ……ない。
違うのにはっきり否定出来ないのは、どうしてかな。
「春田に絡むなよ。困ってるだろ。とっとと帰ろうぜ」
矢沢君が高垣君の首根っこを掴んで引っ張った。
「おい、引っ張んなって」
「うっせー、早く来い」
「おま、思いっきり引っ張んなって」
「早く来ないからだろ……春田、じゃあな」
「あ……うん。バイバイ!文化祭の役、一緒に頑張ろうね」
ぎこちなくも、にっこり微笑む。
すると、矢沢君は少しだけ目を見開いた。
だけどそのすぐあとに、フッと口元をゆるめて笑ってくれた。
「ぷっ、お前ら2人ってわかりやす」
あたしたちのやりとりを見て、高垣君がクスクス笑う。
「うっせー、黙れ。行くぞ」
あは、2人ってホントに仲良しなんだね。
なんだか見てたら笑える。
「バイバイ、また明日ね」
笑顔で小さく手を振ると、高垣君はニッコリ笑って振り返してくれたけど、矢沢君にはプイとそっぽを向かれてしまった。
心なしか、顔が赤いような気がする。
だけど、気のせいだよね。
「晶斗ー、お前はマジで素直じゃねーな」
「あーもー!お前はマジでしつこい」
「このこのー!」
「やめろ」
高垣君が肘で矢沢君の腕をツンツンしている光景を最後に、2人の姿は見えなくなった。