キミの笑顔が見たいだけ。


そのまま外来を突き抜けて、出入り口の自動ドアから外に出る。


空は夕焼け色に染まって、切ないほどの哀愁が漂っていた。


どれだけがむしゃらに走っても、さっきの先生の言葉が頭から離れない。


『余命は長くて1年……短くて数ヶ月』


ねぇ、先生。


いくら冗談だとしても、いたいけな女子高生にそれはないんじゃない?


まだ15年しか生きてないのにさ。


そんな冗談、ホントやめてって感じ。


気付くと病院からかなり離れた地元の駅まで走っていた。


学校の体育の授業より全力疾走しちゃったよ。


かなり疲れたんですけど。


はぁはぁと息を切らしながら、駅の中の階段を上がる。


2階の改札口前の広場には、たくさんの人が行き交っていた。


広場の中央にある円形の花壇のブロック塀の上に、ヘナヘナと腰を下ろす。


心臓がドキドキしてるのは全力疾走したからで、それ以外の理由なんてあるはずがない。


そうだよ……。


他に理由なんて……あるはずないんだ。



「きゃははー、それで昨日彼氏がさぁ」


「昨日の小テスト、マジありえなかったよねー!」


「あはは」



喧騒がどこか遠くに感じる。


みんな笑っていて、自分だけが暗い闇に取り残されているような孤独に包まれた。


ちゃんとここに存在しているはずなのに、そんな実感がまったく湧かない。


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