キミの笑顔が見たいだけ。


お父さん……。


あたし……死んじゃう、の?


脳にある腫瘍。


脳腫瘍……。


手術が出来ない。


効果的な治療法がないんだよね……?


余命は長くて1年……短くて数ヶ月。


それって……確実にーー。



確実に死ぬってことだよね。



「おとう、さん……あたし、あたし……っ」



まぶたを焼くような熱い涙が目から溢れ出る。



「ウソ、だよね……っ?冗談、なんだよね……?さっき言われたこと……っ」


「菜都……」



ねぇ、お父さん。


お願いだから、ウソだと言って。


あれはあたしの画像じゃなくて、誰か別の人のものとまちがえていたんだって。


お願いだから……そう言って。


「おとう、さん……あた、し、死ぬ、の……っ?」


「な、つ……っ」



電話の向こう側で震えるお父さんの声。


ねぇ、泣いてるの?


泣かないでよ……っ。


本当だって認めてるようなもんじゃん。


お父さんに泣かれたら……ツラいよ。


苦しいよ。


お父さんにバレないように声を押し殺したまま涙を流し、制服の袖で何度も何度もそれを拭う。


「帰っておいで……菜都。海生も交えて、これからの話をしよう」


「ふっ……うぅっ……っく」



やだ、やだよ。


あたし、まだ何も知りたくない。


病気のこととか、残された時間とか……。


「矢沢先生が、言ってたよ。未来に希望を持ちましょうって……今の医学はとても進歩してるから、新しい治療法が見つかる可能性を一緒に信じようって」


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