キミの笑顔が見たいだけ。
立ちすくんでいると、車道を挟んだ反対側の道から誰かが走り寄って来るのが見えた。
傘をさしておらず、雨を避けるようにカバンで頭を覆いながら近付いて来る。
どこか見覚えがあるその人。
あれは……。
ーードキン
……矢沢(やざわ)君?
だんだん近づいて来ると、その姿がはっきり見えるようになった。
スッキリしたシルエットに、ちょっと不良っぽい風貌。
やっぱり……矢沢君だ。
彼は慌ただしくあたしの隣に駆け込んで来た。
わわ、どうしよう。
なんか緊張する。
「マジ……最悪」
小さくつぶやいた矢沢君の声に、ゆっくりと顔を横に向ける。
誰がどう見てもわかるくらい、矢沢君はびしょ濡れだった。
頭に掲げていたカバンも、この雨のせいで色が変わっている。
ポタポタと髪の毛から落ちる雫を見ているとなんだかすごく寒そうで、こっちまで体温が下がっていくような気がした。
ひとことで表すと矢沢君はすごく派手。
髪の毛は茶髪だし、ピアスだってしてるし、ネクタイはゆるゆるだし、ズボンは腰ではいてるし。
同じクラスだけど、ほとんど話したことはない。