キミの笑顔が見たいだけ。
あの日から1週間。
数日前、矢沢君はお礼だと言って服と一緒にお菓子を添えて返してくれた。
あ、ちなみに傘もちゃんと持って来てくれたんだ。
ちょっと照れたような顔をしていたのが印象に残ってる。
ハート柄はやっぱり、恥ずかしかったよね。
「なっちゃん、3組の岡田(おかだ)君が呼んでるよー!」
教室のドアのところから、クミちゃんがこっちを手招きしている。
あたしは食べ終えたばかりのお弁当箱をカバンにしまって、立ち上がった。
「セイちゃん!どうしたの?久しぶりだね」
「悪い、教科書かしてくんね?次英語なんだよ」
「珍しいね、セイちゃんがあたしのところに来るなんて」
「たまたま通りかかったのが、菜都の教室の前だったから」
「そっか、ちょっと待ってね」
「おう、サンキュー」
白い歯を出して笑うセイちゃんは、幼稚園の頃からの幼なじみ。
坊主頭でいかにも野球部って感じの男の子。
机の中から教科書を取り出してセイちゃんに渡した。
「お、菜都のクラスは俺らよりちょっと進んでんじゃん。答え書いてあるなんて、ラッキー!」
「もう、自力でやらなきゃ!」
「そう堅いこと言うなって。じゃあ、借りてくわ」
「うん」
「じゃあな」
セイちゃんはあたしの頭をクシャッとひと撫ですると、自分の教室に戻って行った。
「ちょっと!どういうこと?なっちゃんって、岡田君と知り合いなの?」
直後、クミちゃんを含むたくさんの女子に取り囲まれた。
ものすごい剣幕で肩を掴まれ、揺さぶられる。
「知り合いっていうか、幼稚園の頃からの幼なじみだよ」
「えー、ずるーい!矢沢君といい、岡田君といい……イケメンばっかじゃん!」