キミの笑顔が見たいだけ。


いつでもどこにいても、なぜか矢沢君のことばかりが気になって目で追ってしまう。


大勢の中に紛れていても、一瞬で矢沢君を見つけられるようになったのはいつからかな。


すれ違い際に振り返って矢沢君を見たり、妙にソワソワしちゃったり。


この気持ちはなんなんだろう。


ーービュー


「さ、寒い。痛い」


放課後、屋上で風に吹かれながら、何気なく3階の渡り廊下を見下ろしていた。


今日は天気が良いから暖かいと思っていたけど、あまりにも風が冷たすぎる。


マフラーをして来てよかった。


寒さに身を縮めた時だった。


あ、矢沢君……。


ポケットに両手を突っ込んで渡り廊下を歩く、矢沢君の姿が見えた。


茶髪の髪がふわふわ揺れている。


遠目でもやっぱり、カッコいいなぁ。


そんなことを思っていると、その背中を追うように誰かが走り寄って来た。


背中まで伸びたパーマがかった茶色の髪と、短いスカートから覗く細い足。


淡いピンク色のカーディガンが、すごくよく似合ってる。


背が高くて、細くて、色白で、可愛い。


あれは確か、2年の先輩だ。


その先輩は背後から矢沢君を呼んだらしい。


その証拠に矢沢君が立ち止まって振り返った。


先輩は緊張しているような面持ちで、必死に矢沢君に何かを告げている。


告白……かな?


顔を真っ赤にして、いかにも矢沢君のことが好きみたい。


胸の奥がギュッと痛んだ。


どうしてだろう。


こんなにも胸が苦しいのは。


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