キミの笑顔が見たいだけ。


胸が痛くて、張り裂けそう。


思わず涙が溢れた。


なんで……?


これじゃあ、矢沢君のことが好きみたいじゃん。


好きだから……こんなにも胸が苦しくなるの?


成り行きを見守っていると、矢沢君がペコッと頭を下げて先輩を置き去りにして歩き出した。


先輩はその場に立ち尽くしたまま、悲しげな顔で矢沢君の背中を見つめている。


ここからじゃよく見えないけど、手で目元を拭っている姿から察すると泣いているみたい。


振られたのかな……?


よかったなんて、あたしには言えない。


だって、先輩はきっとツラいはずだから。


でも、ごめんなさい……。


ものすごくホッとしてしまった。


矢沢君に彼女が出来るのは嫌だって……強く思ってしまったの。


じっと見つめていると、何を思ったのか不意に矢沢君が顔を上げた。


思いっきり目が合ってドキッとする。


どうしよう、かなり気まずい。


矢沢君はわざわざ足を止めて、まっすぐにこっちを見てた。


だけど、しばらくすると目をそらして何事もなかったように歩き出した。


そう……顔色ひとつ変えず、何事もなかったかのように。


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