キミの笑顔が見たいだけ。
「って……俺、自惚れ過ぎ?」
「その……あの……っ」
素直に泣いてたって言えない。
だって、恥ずかしすぎる。
ここで認めたら、矢沢君のことを好きだっていうようなもんじゃん。
そんなこと……言えないよ。
恥ずかしすぎるもんっ。
目を合わせることが出来なくて、うつむいたまま拳をギュッと握り締めた。
「春田、俺……」
一歩ずつゆっくり歩み寄って来る矢沢君。
その分だけゆっくり後ずさりながら、今度は唇を噛み締めた。
「春田のことがーー」
「ご、ごめんなさい……!あたし、用事思い出しちゃったから帰らなきゃ!」
「お、おい」
「じゃあね!バイバイ!」
恥ずかしさと動揺と照れと戸惑いのあまり、矢沢君の顔も見ずにその場から駆け出した。
心臓がありえないほどバクバクいってる。
『俺……春田のことがーー』
どこか真剣な、熱を含んだ声。
ドキドキする左胸を手でギュッと押さえながら、一気に階段を駆け下りた。
「はぁはぁ……く、くるし」
息も絶え絶えに学校を飛び出す。
冷たい風が火照った体を落ち着かせようとしてくれるけど、心拍数は上がる一方。
『俺……春田のことがーー』
その続きを聞いてはいけない気がして、逃げ出してしまった。