キミの笑顔が見たいだけ。


オヤジは脳外科の医師で、神の手を持つすごい医者なんて言われてる。


忙しくて帰りが遅かったり、夜家にいないことが多いけど、休みの日はよく遊びに連れてってもらった記憶がある。


なんでも、お袋とは大恋愛の末に結ばれたとか。


詳しくは聞いてないけど、とにかく2人には色々あったらしい。


青いスクラブを着て首から聴診器をかけたオヤジの姿は、幼い頃から俺の目にしっかり焼き付いている。


オヤジの背中を見て育って来た俺。


あんま、ムリすんなよ。


慌ただしく消えていったオヤジの背中に、心の中でそっとつぶやいた。


そのあと陽真と別れて、姉ちゃんの病室に移動した。


だけど想像以上に疲労困憊している姉ちゃんを見て、早々に退散することに。


産婦人科の病棟を出て1階に移動した。


そして、待合室の前を通った時ーー。


え……?


春田?


思わず足を止めた。


なんで春田がここに?


診察を終えて、ちょうど部屋から出て来たところだったようだ。


少し距離があるせいか、春田は俺に気付いていない。


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