キミの笑顔が見たいだけ。


具合いでも悪いのか?


けど、さっきはそんな風に見えなかった。


あのあと、体調を崩したのか?


体が弱いって言ってたもんな。


大丈夫なのかよ。


春田が出て来たのは、1番診察室ーー。


そこにはーー医師、矢沢 琉衣斗。


そう記されていた。


番号毎に診察科目が分かれており、2番は消化器、3番は内科、4番は婦人科と10番までたくさんの科がある。


1番はどうやら、脳神経外科らしい。


春田が脳外を受診?


しかも、オヤジの診察を受けてんのか?


なんで……?


風邪なら普通は内科とかだよな?


なんで脳外に?


嫌な予感が拭えなくて、ドクンドクンと胸が高鳴る。


立ち止まったまま動けないでいると、春田の背中はあっという間に受付の方に消えて行った。



その日の夜中ーー。


春田のことがどうしても気になって、珍しく起きてオヤジの帰りを待った。


AM2時を回った頃。


ーーガチャ


オヤジが帰宅した。


「オヤジ」


「晶斗。お前、まだ起きてたのか?」


目を丸くするオヤジ。


普段俺から話しかけることなんてないから、かなりビックリしているようだ。


「あのさ、聞きたいことがあんだけど……」


「聞きたいこと?なんだ?」


オヤジは俺の前に腰を下ろし、まっすぐに俺を見据えた。


どんな時でも疲れた顔を見せず、真剣に向き合ってくれるオヤジ。


曲がったことが大嫌いで正義感が強くて、たまにウザいと思うこともあるけど尊敬もしてる。


「今日病院でクラスメイトを見かけて。春田っていう女なんだけど……」


患者の個人情報を教えてくれるわけがないことはわかってる。


だけど、どうしても気になった。


「あいつ、どっか悪いの?オヤジが診察したんだろ?」


< 53 / 222 >

この作品をシェア

pagetop