キミの笑顔が見たいだけ。
「あ、あの……昨日はその、ごめんね」
「いや、俺も変なこと言って悪かった」
「ううん、そんなことないよ」
どこか困ったように眉を下げて悲しそうに笑う春田。
今日は髪をアップにしていて、いつもより少し大人っぽく見えた。
可愛い……。
そう思ってしまうのは、春田に惚れてるから……。
素直に認めたら、なんだかすっげー楽になった。
挙動不審な春田じゃなくて、こいつの笑顔が見たい。
俺の前で笑ってほしい。
どうやったら、こいつの笑顔が見れるんだよ。
俺の初恋は始まったばかり。
振られてもいないのに諦めるなんてことはしたくない。
よし。
こうなったら、とことんやってやろうじゃねーか。
やるだけやって春田を振り向かせる。
それがダメなら、その時にまた考えればいい。
たとえ逃げられたって、めげずにやるだけやってやる。
こうなったら、気が済むまでは諦めない。
たとえ逃げられようとだ。
「春田、遅刻すんぞ!急げ!」
「え?あ、ま、待って……!矢沢君」
「早くしろよ」
「あたし、足遅いから」
そう言いながら苦笑する春田にドキッとした。
グレーのマフラーと、赤のチェックのネクタイがよく似合ってる。
春田の笑顔が見たい。
そう思った瞬間から、きっと俺の初恋は始まっていた。