キミの笑顔が見たいだけ。


連休明けの朝、見事に体調を崩してしまい、頭痛と吐き気に見舞われた。


寝不足だし体は重いしで、気分が上がらない。


おかげで今日は学校を休んで朝から病院に来てる。


点滴を打ってもらって横になっていると、帰る頃にはずいぶん良くなった。


「栄養不足と寝不足だな。何か悩み事でもあるのか?」


矢沢先生はいつも、あたしの話を聞いてくれる。


今だって診察は終わってるのに、処置室で点滴を終えたあたしのところに来てくれた。


「色々あるよ。なんたって、乙女ですから」


「お、ってことは恋愛の悩みか?」


ニヤッと笑う矢沢先生。


その顔はやっぱり、矢沢君に似てる。


「まぁ……そんなとこ」


「そうか」


うんと小さく頷くと、矢沢先生はそれ以上何も言わなかった。


「ねぇ……先生」


「どうした?」


「あたし……好きな人に告白されたの」


女子高生の恋愛話なんて、先生はきっと興味がないだろう。


でもだからこそ、先生に聞いてもらいたかった。


あたしの場合、何も知らない人に話せることの方がたくさんある。


好きな人や親友には、なにひとつホントのことが言えないんだもん。


「付き合ってほしいって言われたけど、振っちゃった……。これで……よかったんだよね……?」


でも、だけど。


あの日から、何かがずっと心に引っかかってる。


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