キミの笑顔が見たいだけ。


「はぁ、寒い……」


病院からの帰り道、マフラーを巻いて帰途につく。


曇り空のせいか、風が冷たくてとても寒い。


だけど空気はジメッとしていてかなり不快だ。


分厚い雲が空を覆って、なんだかまた雨が降り出しそうな予感。


ーーポツ


ーーポツポツ


そんなことを思った矢先、突如降り出した雨。


「うわ、最悪……っ」


この前と同じだよ。


傘持って来てないのにー。


古びた駄菓子屋さんの前の軒下に身を寄せ、そこで雨宿りをすることにした。


そういえば、前にもここで雨宿りをしたっけ。


その時、あとから走って来た矢沢君と雨宿りをしたんだ。


懐かしいなぁ。


あれから色々あったよね。


あの日からきっと、憧れが恋に変わった。


矢沢君の優しさを知った、あの日。


こんなにも好きになるなんて……夢にも思わなかったよ。


「春田!」


え……?


とっさに声がした方に顔を向ける。


ウ、ウソ……。


なんで?


「や、矢沢君」


反対側の道路から走って来た矢沢君は、この前とは違って黒い傘をさしている。


あっという間に目の前まで来ると、大きく肩を揺らして呼吸を整え始めた。


「休んでたくせに、出歩いてていいのかよ?」


「あ、うん。病院行ってたの。それより、どうしたの……?」


なんだか、色々タイミングが良すぎじゃないかな?


「あー……プリントとか配布物を届けに来た。それより、具合いはどうなんだ?」


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