キミの笑顔が見たいだけ。
いつの間にか、記憶が飛んでいた。
飛んでいたというよりも、実際には寝てしまったのだ。
「……クシュンッ」
うぅ、寒っ。
凍えるような寒さの中、自分のクシャミでハッと目を開けた。
「え……?ウソ……待って」
なに?
あたし、あのまま寝ちゃったの……?
ウソでしょ。
信じられないよ。
手や体に触れる芝の感触。
かすかに聞こえる川の流れる音。
目の前に広がる満天の星空。
明らかに外だ。
うわぁ。
やってしまった……。
こんなところで寝るなんて。
慌てて起き上がると、ブレザーのポケットを探ってスマホを取り出した。
「わ、やばっ」
そこには予想通り、お父さんや海生からたくさんの着信やメッセージがあった。
だけど3件ほどそれとは別にメッセージが届いていた。
『海生から連絡来た!お前、今どこにいんだよ?』
『見てねーのかよ!どこで何やってんだ?』
『頼むから連絡して』
送り主は矢沢君で、見落としていたけど着信履歴も数回残っていた。
『ごめん、桜並木の河川敷の土手で寝てーー』
ーーピロリン
そこまで打ち込んだ時、タイミング良く矢沢君から電話が来た。
既読になったのを見たんだろう。
なんて早さ。