キミの笑顔が見たいだけ。
「えへ?じゃねーよ……ったく、はぁ」
あたしの隣にドサッと座り込んだ矢沢君は、頭を抱えながら大きなため息を吐いた。
「なんでこんなところにいたんだよ?しかも、寝てたってどういうことだ?」
「星、綺麗じゃない?」
「はぁ……?」
「だから、星だよ。星!ほら見て」
「…………」
満面の笑みで空を指差すと、矢沢君はさらに呆れたような目を向けてきた。
だけど、気にしない。
「起きたら星が綺麗だったから、思わず見惚れてたんだ」
「見惚れてたって……お前、危機感ねーのかよ」
「危機感?」
「んなとこで寝て、何かあったらどうすんだよ。この辺、人通りも少ないんだぞ」
「ご、ごめん……」
矢沢君の顔があまりにも真剣だったから、思わず謝罪の言葉が出た。
「あんま心配させんなよ」
そう、だよね。
普通なら心配するに決まってる。
あたしって、ホントバカだよね。
どこまでも人に迷惑をかけてる。
でも……。
「なんかね……このままどっかに行っちゃいたいなぁって、たまに思ったりするんだ」
「なんだよ、いきなり」
「屋上とか駅の上の広場とか……こことか。たまに逃げ場にしてるの。でも、それでもここじゃないどこかに行きたいって思うこともあって……逃げたいっていうか、帰りたくなくて。ぼんやりしてたら、いつの間にか寝ちゃってた」
「…………」