キミの笑顔が見たいだけ。


急に押し黙る矢沢君。


いきなりシーンとした空気に変わって、緊張感が増した。


バカな奴だなって思ったよね。


いきなりこんな話をされて、呆れたのかもしれない。


変な奴だって思われたかも……。


「あ、えっと。変なこと言ってごめーー」


ーーギュッ


あたしの声を遮るように、芝生の上に置いた手に矢沢君の大きな手が重ねられた。


「逃げたくなったら、今度からは俺を呼べ」


月明かりに照らされた綺麗な横顔に、ドキンと鼓動が跳ねる。


「いつでも飛んでってやる」


どうしてだろう。


ぶっきらぼうなのに、温かみがあってすごく安心させられるのは。


「そばにいてやるから」


「…………」


重なった手から伝わる優しさが胸に染み渡る。


「あり、がとう……矢沢君は優しいね」


「んなの……」


「…………」


「好きだからに決まってんだろ。他の女には言わねーよ」


うっ。


「俺、自分の気持ちに素直に生きることにした。だから、思ったことはこれからどんどん口にしていく」


ぶっきらぼうなくせにまっすぐで頑固で。


一度言い出したら聞かないけど強引ではなくて、あたしの声に耳を傾けてくれる。


こんなあたしを……好きだと言ってくれる。


そんなキミを、たまらなく好きだと思った星の綺麗な夜。


なんだかね……切なくて涙が出そうになった。


「菜都って呼んでいい?」


「え……?」


「あいつも呼び捨てだし?幼なじみかなんだか知んねーけど、負けてられっかよ」


「…………」


「ってことで、菜都って呼ぶから」


「あ、うん……」


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